日本における金融教育の実態~日本証券業協会の調査報告書を読み解く④~
今回もまた前回の続きでこちら、
を読み解きながら、
日本の金融教育の現状、日本の金融教育が海外と比べて遅れていると
いわれている理由はどこにあるのか、それなのに日本が学校の授業で
金融教育を積極的に行わない理由は何なのか、
について考えていきたいと思います。
前回のブログはこちら
それでは、今回も見ていきましょう。
先生たちにアンケートをとった結果です。
金融教育の実施状況は、実際どのような感じなのでしょうか。
実施状況は、
行っている(41.9%)
行ったことはある(29.4%)
行っていない(27.7%)
という結果でした。
「行っている」というのは、継続的に行っているという先生でしょうか。
「行ったことはある」というのは、行ってみたけれども、何か理由があって
今は継続的に行っていないということでしょうか。
とすると、6割近い先生が現在は金融教育を行っていないということに
なりますね。
それでは先生たちは、金融教育を学校で行うことについてどう考えている
のでしょうか。
金融教育の必要性
必要である(37.0%)
ある程度必要である(58.0%)
あまり必要でない(4.1%)
必要でない(0.3%)
なんと、95%の先生が、必要性を感じているではありませんか!
この調査結果はとても喜ばしいですね!!
ほとんどの先生が、金融教育は必要だと思ってくださっています。
では、必要な理由はというと、
金融教育の必要理由(上位4つ)
1:賢い消費者としての知識を身に付けるため(73.5%)
2:社会の仕組みを理解するため(44.8%)
3:将来個人として自立するため(38.9%)
4:正しい金銭感覚を身に付けるため(24.6%)
1位の「賢い消費者としての知識を身に付けるため」というのが7割を
超えていますね。
これです!これ!
私がなぜ金融教育の必要性をずっと訴えているかというと、これなんです!
「貯蓄から投資へ」と投資を推奨した政府が以前ありましたが、金融教育を
受けていないのに、時代の流れに乗って、銀行員の言うがままに、
証券マンの言うがままに、不動産会社の言うがままに、投資行動を
してしまい、うまくいかなかった人がたくさんいるんです。
損をした!騙された!と言って、裁判沙汰になっている例もたくさんあります。
銀行員も、証券マンも、不動産会社も、騙そうとして商品を売っている
わけではないと思います。
(中には悪い人もいると思いますが)
いいと思って販売した商品でも、損してしまう商品はたくさんあります。
なのでその商品が、良い商品か、悪い商品か、お金を出す人が自分で
見極めなくてはいけないんです。
人の言うがままに購入して損をしたら、誰にその怒りをぶつけていいか
分からないですよね。
でも、自分で納得して購入して損をしたら、まぁ、自分が納得して
購入した訳だししょうがないか、ってなりますよね。
ですから、その商品が良いものなのか、悪いものなのか、自分で見極められる
「力」が必要なのです。
この「力」は、金融教育を受けることによって身に付くものだと思います。
金融教育を受けていないことのデメリットについては、また後日ブログに
したいと思います。
一方で、先ほどのアンケート結果で少数派だった、金融教育は必要ではないと
考えている先生方、なぜ必要ではないと考えているかというと、
金融教育が不必要である理由(上位5つ)
1:学校では、教えるための体制や仕組みが整っていないため(52.5%)
2:教員がそのための知識や指導方法を身に付けていないため(42.9%)
3:学校ではなく社会で身に付けるべきことと考えられるため(23.7%)
4:お金に関することは学校で教えるべきではないと考えられるため(7.1%)
5:学校ではなく家庭で身に付けるべきことと考えられるため(6.1%)
となっています。
この質問だけ聞くと、学生にお金のことなんて教える必要はない!と
考えられているのかと思いましたが、
1位と2位は「教える」ということに対してとても責任感のある、
ごもっともなご意見でした。
そうですよね。体制や仕組みが整っていなかったり、先生自身がその知識や
指導方法を身に付けていないのに、ただ上辺だけ生徒に教えても、
それならやらなくてもいいのでは?と思いますよね。
一方で、3位・4位・5位は少数ではありますが、学校で「お金」についての
授業はやる必要がないとお考えの先生もいらっしゃるようです。
これは各ご家庭で、ご両親がやるべき、と思われているのでしょうか。
ご両親がそれをできるご家庭は、それで全く問題がないと思います。
でも、様々な理由から、できないご家庭ではどうするのでしょうか。
ここまで、様々な調査結果を見てきましたが、最後に2つの調査結果について
考えたいと思います。
まず1つ目、授業実施の際に難しいと感じる点は(上位5つ)
1:生徒にとって理解が難しい(48.9%)
2:教える側の専門知識が不足している(48.4%)
3:授業時間数が足りない(44.9%)
4:現実経済の変動が複雑すぎる(37.8%)
5:適当な教材がない(26.6%)
このような結果となりました。
1位から5位まで全て、関連していると思います。
生徒にとって理解が難しいということは、まず授業時間数が足りないので
駆け足で上辺だけの授業が行われている、そして、教える側の専門知識が
不足していることに併せて、分かりやすく伝えるための適当な教材がない、
さらに、現実経済の変動が複雑すぎて、教える側もついていけないし、
教材もついていけない、こんな感じではないでしょうか。
上記をふまえ、金融教育の授業実施の支援(上位5つ)について
何が求められているかというと、
1:平易な内容で、生徒が利用しやすい副教材(74.3%)
2:金融や経済の知識を得ることのできる教員向け研修会(31.0%)
3:外部講師の派遣(25.7%)
4:インターネットを通じた一層の情報提供(24.2%)
5:職業体験(インターンシップ)(11.6%)
となっています。
全部、もっともという感じですが、特に3位の外部講師の派遣について、
それぞれの学校に専門の先生がいないのであれば、外部講師に
お願いすることはとてもいいことだと思います。
英語の授業でも、英語の知識は日本人の英語の先生で十分でしたが、
発音はやはりネイティブの先生がいいということで、AETという
英語がネイティブの先生に教えてもらっていましたよね。
ここは、金融の専門家に授業をしてもらった方がいいのではないかと思います。
先生が自ら研修会等で知識を得てもらい、授業に活かしてもらうにこしたことは
ありませんが、ただでさえ先生は忙しいお仕事です。
それなのに、さらに金融の研修会に出て、知識を身に付ける、というのは
酷だと思います。
「金融」に関しては、専門家がいるんですから、その人の力を借りれば
いいのではないでしょうか。
ここまで、4回に渡り、
を読み解くことで、なぜ日本では金融教育が積極的に行われていないかについて、
考えてきました。
想像通りというのが、正直な感想です。
最近は、「金融リテラシー」という言葉も頻繁に聞かれるように
なってきています。
金融庁やいろいろな機関が、学生に金融教育をしようとがんばっています。
でも、まだまだ日本は諸外国に比べ、この教育が遅れています。
人生100年時代と呼ばれる世の中になりました。
2,000万円問題という言葉もありましたが、人生100年時代を迎えるにあたり、
大切なのは「健康」と「お金」です。
人生100年時代を楽しく安心して過ごせるように、学生の頃から
正しい金融知識を身に付けていくことが大切なのではないでしょうか。
そのためには、金融教育が通常の授業に組み込まれ、誰もが正しい知識を
身に付けられるように早くなるといいなぁと思います。
やっぱり池上さんの解説に勝るものはないのでしょうか!?