ともらぼ~CFPが100歳人生を考える~

金融教育がほとんどされない日本。その中でこれから迎える100歳人生をどう生きていくかを考えます。

日本における金融教育の実態~日本証券業協会の調査報告書を読み解く②~

 

今回も、前回の続きでこちら、

「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」

を読み解きながら、

日本の金融教育の現状、日本の金融教育が海外と比べて遅れているといわれている

理由はどこにあるのか、それなのに日本が金融教育をしない理由はなんなのか、について

考えていきたいと思います。

 

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前回の記事はこちら

tomolabo-cfp.hatenablog.jp

 

前回分かったことは、

・金融教育を行っている学校でも、少しの時間(5時間以下が多数)しか授業を

 行っていない

・そんな中、テーマは結構難しいので表面的なことをさらっと学習しているだけ

 なのでは ないか

ということでした。

 

それでは、さらに調査結果を見ていきたいと思います。

 

前回、授業時間が短いなぁと感じましたが、先生たちはあの授業時間で十分だと思って

いるのでしょうか?

 

金融教育に関して、授業時間の確保状況

十分である(7.2%

やや十分(32.3%

やや不十分(46.9%

不十分である(12.1%

 

やはり、思っていないようです!

59%の先生が不十分と思っていますね。

 

ではそれはなぜかというと、

授業時間不足の要因(回答が10%以上のもの)

1:現行の教育計画にその余裕がないため(84.7%

2:教える側に専門的な知識が足りないため(32.5%

3:他により重要な学習内容があるため(25.3%

4:教科書の記述が少ないため(24.3%

 

1位と3位は、同じようなことのような感じがします。

今決められている、やらなくてはいけない授業をこなすことに精いっぱいで、

そのやらなくてはいけないことに「金融」が入っていないということですね。

それではなぜ、そのやらなくてはいけないことに「金融」が入らないのでしょうか?

学習要領を決める方たちが、「金融」を授業で扱うことの重要性に気が付いてないから

でしょうか?

2位の項目が、それを表わしているのかもしれません。

自分たちが内容について分かっていなかったら、必要かどうか判断できないですもんね。

 

このままだと、

「金融」の授業が行われない

「金融」について知識を得るためには、独学もしくは金融機関に就職するしかない

先生になる多くの人は大卒で先生になるため、独学していない限り「金融」知識が乏しい

金融教育の必要性を感じない

日本の授業に金融教育のカリキュラムは組み込まれない

 

というスパイラルがずっと続くのではないでしょうか。

 

 

4位の項目についても考えてみたいと思います。

教科書の記載について、内容は満足できるものとなっているのでしょうか。

 

金融教育に関する教科書の記載の充実度

十分である(14.2%

やや十分(46.5%

やや不十分(32.1%

不十分である(5.7%

 

不十分との考えが60%を超えていますね。

では、どういう点に関して不十分かというと、

 

不十分である内容

消費生活分野(上位5位)

1:クレジット、ローン、証券など(40.9%

2:年金制度(35.0%

3リスク管理(保険でカバーすべき事象)(29.1%

4:働くこととお金(20.8%

5:生活設計と家計管理(20.4%

 

金融・経済分野(上位5位)

1:株式市場の役割(37.4%

2:保険の働き(34.7%

3:資金(お金)の流れ(25.8%

4:企業の役割・社会的責任(CSR等)(24.5%

5:経済の基本的な仕組み(21.3%

 

こちら、1つずつの項目で本が1冊ずつあってもよさそうですね。

この内容が、きっと家庭科などの教科書の数ページに書かれているだけのでしょうから、

確かに教科書の記述は不十分ではないかと考えられます。

 

そして、これらの教材を使用しての少ない時間の授業で起こっている問題点は、

 

金融教育学習内容の問題点(10%以上のもの)

1:用語・制度の解説が中心となってしまい、実生活との繋がりを感じにくい(55.0%

2:知識は身につくが、能力や態度が身に付きにくい(40.9%

3:学校の教育計画での金融経済教育が特定の学年・時期に偏っており、継続的な

 学びができない(31.6%

4金利金融商品の種類、リスクとリターンの関係など、実践的な知識が少ない(28.3%

5:収支管理や貯蓄といった、自立に必要な基本的能力が身に付きにくい(22.2%

となっています。

 

私個人の意見ですが、

1位については、まぁそうなりますよね、という感じです。幅広い内容に対して、

授業時間が5時間以下ですからね。

 

2位については、中学生や高校生では、まずは知識の習得でいいのではないかと思います。

知識の習得+能力や態度を一気に身に着けるって、なかなか難しいことだと思います。

少しずつコツコツと身に着けてもらいたいと思います。

 

3位については、2位に通じるものがありますが、短期間で身に着けられる知識ではないので、

毎年コツコツと学んでもらいたいものです。

 

4位については、これは先生の知識が少ないということでしょうか?学校の先生は激務だと

聞きます。普段の授業準備に加え、金融の知識を身に着けたり、自分で運用商品を購入

してみたりというのは、なかなか厳しいのではないでしょうか。それを先生に求めるのは

酷だと思います。

ですので、金融の知識は、それ専門の先生が授業を行うべきだと思います。

国語だって、数学だって、日本史だって、それぞれ専門の先生が行っていますもんね。

 

5位については、生徒各自の家庭環境等にも影響されるでしょうし、難しい問題ですね。

 

このように、今回もいろいろ見てきましたがまとめますと、

・金融教育を行っている先生たちは、授業時間は不十分だと感じている

・それは、授業時間の確保が難しい、先生自身の知識が少ない、教科書の記載が不十分、

 ということが起因している

ということでしょうか。

 

前回、今回と、調査報告書を読み解くことで、日本の金融教育が抱えている問題点が少しずつ分かってきましたね。

調査報告書はまだ続きますので、また次回、続きを見ていきたいと思います。

 

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